彼岸花(ひがんばな)
彼岸花(ひがんばな)はお彼岸を待っていたかのように咲く花です。1本の茎からすっと伸びた先に赤くカールした細い花弁が優雅です。畦道に群生する様子は、燃えるように真っ赤で引き込まれます。
彼岸花の有名なのは童話「ごんぎつね」の里である愛知県半田市。半田川沿い2㎞に渡って市民らが植えた彼岸花が咲き乱れる様子は圧巻です。浜松市でもフラワーパークで彼岸花の群生を鑑賞することが出来ます。
しかし「摘むと死人が出る」「花を家に持ち帰ると火事になる」などと言い伝えられ、花の異名も「死人花」「幽霊花」「地獄花」と怖いものばかり。お彼岸のころ開花することや墓地でみかけることが多いこと、根・花・茎に毒性があるからなのですが、本来は人々のために役立ってきた花なんです。
毒性があるため、古くはネズミやモグラなどに土葬した遺体や稲を荒らされないように植えられてきました。現在も田んぼの畦道や墓地でよく見かけるのはそのためです。「摘むと死人が出る」などの言い伝えは、子供が引き抜いて触ったり食べたりしないための戒めだったのです。また、彼岸花はしっかり毒抜きすることで食べることができ、飢餓や災害・戦争の際の救荒植物として利用されてきました。さらに専門家が精製することで生薬としても利用されています。
彼岸花は別名「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」とも言います。仏典に由来しサンクリット語で「天界の花」。おめでたいことが起こる前に、天から花がひらひらと舞い降りてくる「良いことの前兆」だとされ、それを見たものの悪業を払うとも信じられています。
赤い彼岸花の花言葉もいい意味があり、「情熱」「想うのはあなたひとり」「あきらめ」などがあります。「あきらめ」は負のイメージですが、仏教用語では「真実」「悟り」という意味になります。自分の心と向き合い真実を見つめ明らかにするという、残された人の心を癒す素晴らしい花から不吉ではないと分かりますね。
※彼岸花を食用・民間療法として利用するのは大変危険な行為です。